前回の記事でご紹介した信濃毎日新聞の社説、
軍事研究へ研究者を取り込む動きについても大切なことが書かれ
ています。
● 学術会議への介入 自由の圧迫に抗さねば (信濃毎日)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2020112300065
<一部抜粋>
運営費交付金は総額の削減が続き、法人化後の10年でおよそ1割
減額された。研究者は資金不足にあえいでいる。軍事応用できる基礎
研究に助成する公募制度を防衛省が始めた15年度には、大学からの
応募が相次いだ。軍事研究に科学者を取り込む動きは安倍政権下で
目に見えて強まった。
歯止めをかけたのが学術会議の17年の声明だ。学問の自由、大学
の自治の観点から、防衛省の制度は「政府による介入が著しく、問題が
多い」として大学や研究機関に慎重な対応を求めた。同時に、戦争を
目的とする研究を絶対に行わない決意を掲げた50年と67年の声明を
継承すると明記した。
学術会議は、戦争に科学者が動員され、また自らすすんで協力した
ことへの深い反省に立って創設された。軍事と一線を画す決意は、ゆる
がせにできない戦後日本の科学界の出発点である。
<抜粋終わり>
つまり、予算を削って事実上「研究者が自由に研究できる」環境を
奪い、防衛省が札束で引っぱたくように軍事研究に誘い、科学者コミュ
ニティを切り崩しているわけです。
日本学術会議の「軍事的安全保障研究に関する声明(2017年)」
は、札束(予算)に誘われるがままに軍事研究を始めれば、防衛省(国
家権力)の大学・研究への介入(コントロール)は不可避で、研究の自主
・自立も、学術の健全な発展も、消えてなくなることを懸念したものです。
短いので、ぜひ全文お読みください。
<日本学術会議>
軍事的安全保障研究に関する声明(2017年3月24日)
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/gunjianzen/index.html
少なからぬ方々が、軍事研究を禁じる日本学術会議こそ、「学問の
自由」を侵害している!と怒っておられますが、
声明をお読み頂ければ分かるように、そもそも日本学術会議は軍事
研究を「禁じ」てはいませんし、
予算を枯渇させて研究者が自由に研究できない環境にした上で、
「防衛省の予算で研究いかがですか♪」とばかりに甘く厚い札束で
軍事研究へと誘う。その誘いの先には研究の自律性も、成果の公開も、
科学者の倫理もない。
この状況を前に、一体、「学問の自由」を侵害しているのは誰かと、
問いたいところです。