2014年6月21日土曜日

エンタメ憲法シリーズ 「風立ちぬ」と特定秘密保護法

★ネタバレ注意…といっても、もうみんな見てるかも★

 「風立ちぬ」といえば、スタジオジブリが製作した、零戦を作った堀越二郎の生き様と恋の物語ですね。私も2回見たんですが、自分の病気を顧みず二郎に会いに行く菜穂子の姿とか、二郎の仕事が成功するのを見届けずにそっと山に帰る菜穂子とか、健気で泣けてきます。瀧本美織さんの声もよかったですよね。え、もちろん庵野監督の声も独特で良かったと思いますよ。あと、國村隼さんの声も渋いですよね。取ってつけたようですか?そうですか。

 ところで、「風立ちぬ」の舞台って、軍需産業で戦闘機を作っている会社です。大好評、3刷決定の「これでわかった!超訳特定秘密保護法」(https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/1/0238840.html)でもご紹介させていただいたように、民間人でも、国防のための秘密にかかわるのであれば、特定秘密保護法の対象になりうるわけです。しかも、その対象者は意外な程たくさんになる可能性があります。特定秘密保護法が施行された場合、二郎は気を付けないといけませんよね。二郎って、ついポロッと話しちゃいそうなキャラですもんね。

 それで、見ていてぎょっとしたのは、軽井沢からの静養から戻ってきた二郎のところに、特高(特別高等警察)が調べに来ているというシーンが出てくるのです。特高は、思想専門の警察で、無実の人たちも捕まって大変な目にあったと黒川さんが言っていましたね。それで、二郎がかくまわれて、1人だけ別室で仕事をしていたりしました。

 どうも、軽井沢でドイツ人のカストルプ氏と交流していたのがまずかったようです。ファンの間の分析では、カストルプ氏は、戦時中、日本を舞台に活動したスパイのゾルゲをモデルにしているのではないかということでした。そのような怪しい外国人と接触したということは、思想的に怪しいんじゃないかということで、それだけで調査に来たということも考えられますね。しかし、スパイと接触した秘密の保有者ということで、秘密を洩らしたんじゃないかという疑いをかけられて特高が来た可能性も高いですよね。

 鑑賞していて、これが特定秘密保護法が施行された社会の様子なのではないかと感じられて、うすら寒くなりました。誰かがあなたの行動を監視しているかもしれない、たとえ秘密が漏れていなくても取り調べを受ける可能性がある、取り調べを受けたと言うだけで社会的評価にダメージを受ける、場合によっては、取り調べをして社会的評価を悪化させること自体が目的になることもある、そういう法律なのです。

 もちろん、国の安全のための秘密は守らなければなりません。それは十分に理解しています。しかし、その方法や法律を成立させるプロセスがあまりにもおかしいのです。「これでよかったの?特定秘密保護法」という続刊が出てしまいそうな勢いです(岩波さん、どうすか?)。

 政府は、着々と施行の準備を進めて、国会に特定秘密の監視組織を作るとか言ってますが、その組織の勧告に強制力はなく、実効性がありません。これだけ問題点が指摘されていても、修正される気配もありません。本当に、今年12月頃に、このまま特定秘密保護法を施行させてしまっていいんでしょうか。

 そんなことが気になった方は、とりあえず超訳本の前書き『なんで「特定秘密保護法」は問題なの?』と、4ヶ所に出てくる8コマ漫画をお読みいただければ、ざっくりと問題性がお分かり頂けると思います。知った上で、議論していきましょう。施行まで、あと半年近くあります。まだまだ間に合います。

 …ところで、「風立ちぬ」の中で、どうも「紅の豚」のポルコと、「ラピュタ」のドーラに似たキャラが出てきたような気がするんですが、みなさんはどうでしたか?かなり冒頭の、カペローニ氏と出会ったシーンくらいだと思いますが。他にも過去のジブリキャラがこっそり出てるんじゃないかと思い、もう一度見てみるつもりです。