2017年、野党議員が憲法53条に基づき臨時国会の収集を要求
したにもかかわらず内閣は3カ月無視し、9月に召集したと思ったら
冒頭で解散しました(何も議論できず、事実上臨時国会は召集され
なかったも同然でした)。
内閣がこのように野党の要求に応じなかったことは違憲だ、という
訴訟が提起され、那覇地裁では「53条に基づく要求があった場合、
内閣はこれに応じる法的な義務がある」と認められました。
この判決や53条の意義について、武蔵野美術大学の志田陽子教授
の解説記事です。
● 憲法53条・臨時国会召集裁判の意味 議会制民主主義を支えるもの (論座) https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020122800002.html?page=1
国会の役割は「立法」のみならず、予算審議や行政監視など多岐
にわたる、と述べた上で、臨時国会の召集を要求できる条件について
定めた53条の意義を解説しています。
<一部抜粋>
53条後段に基づいて臨時会の要求があったとき、内閣の閣僚や
与党所属の議員は、「今期懸案の法案は可決されたのだから、これ
以上の議事に時間を使いたくない」「もう勝敗はついたではないか」
という気分を感じるかもしれない。しかし、「まだ国会で質(ただ)
すべき事柄がある」「この議事を通じて国民に知らせるべき事柄が
ある」と考えた国会議員が一定数以上いた場合には、この議事の要求
を黙殺することは許されない、というのが53条後段の内容である。
日本国憲法が採っている「議院内閣制」(憲法68条)は、本来は
行政を国会の信任とコントロールのもとに置くための制度なのだが、
現実には、政党政治が組み合わさることによって、内閣に対する国会
の独立性を確保することが難しくなっている。与党の幹部が内閣総理
や閣僚の主だったメンバーを兼ねることになるため、内閣が提出する
法案や予算案に与党所属の国会議員(数として多数派)がそのまま
同調し、結果的に国会が内閣に追従する状態が起きやすいからである。
そうした制度的・現実的前提がある中で、53条後段は、国会と内閣
の関係をあるべき対等な関係へと是正するレジリエンス(自己修復)
の仕組みを担っている。
<抜粋終わり>
政党政治が深化した議院内閣制の下では、
「与党(国会の多数派)=内閣」なので、
国会の行政監視の機能が弱まりがちです。
53条は、そんなパワーバランスにあっても「おかしい」と声を上げ
る少数派の軽視を許さず、きちんと内閣に応じる義務を負わせる、
極めて重要な条文だと分かります。
そして、その極めて重要な規定を堂々と無視した権力の罪深さも
また、重すぎるものがあります。
明らかに、民主主義にとって脅威、である政権を、それでも支持
しますか?
この“事件”は決して忘れてはならないことですし、まだ続いている
裁判を注視しつつ、「憲法を無視する政権・政党はおかしい」
「いくらなんでもひどい」と、自分なりに発信し続けましょう。