敵国のミサイル発射基地などをたたき、日本への攻撃を阻む「反撃
能力(=敵基地攻撃能力)」の保有。政府はこれを、国家安保戦略など
「安保3文書」に保有を明記することを決めました。
「抑止力の強化」という名目ですが、他国領土の基地を攻撃・破壊
する兵器を保有することは、憲法9条下での『専守防衛』の防衛戦略を
有名無実化することになります。ぜひその危険性を知った上で、このよ
うな憲法9条のなしくずし的な死文化が許されるのか、考えてみてくだ
さい。
あすわかとの共著本やイベントでもたくさんお世話になっている柳沢
協二氏(元防衛官僚にして元内閣官房副長官補)が、「敵基地攻撃能力」
の保有の危うさや欠けている議論・視点について語られている記事がある
ので、何回かに分けてご紹介します。
● 「敵基地攻撃、際限のない撃ち合いに」
柳沢協二・元官房副長官補が語る 「国民に被害及ぶ恐れ」伝える必要 (東京)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/216860
<一部引用>
―専守防衛を維持しつつ保有することは可能か。
「専守防衛とは日本は国土防衛に徹し、相手の本土に被害を与えるよう
な脅威にならないと伝え、日本を攻撃する口実を与えない防衛戦略だ。
敵基地攻撃能力を持てば、それが完全に崩れて専守防衛は有名無実化する」
―日本が取るべき道は。
「力には力で対抗する抑止の発想では、最終的に核武装まで行き着いて
しまい、その論理は正しい答えではない。日本は国土が狭く、食料やエネ
ルギーなどを全て自給できず、海外とつながらなければ生きていけない。
少子化も進み、戦争を得意とする国ではない。武力強化ではなく、戦争を
防ぐ新たな国際ルール作りに向け、もっと外交で汗をかかなければいけない」
<引用終わり>
憲法9条の下では、「攻撃ははじき返すけれども国土防衛に徹して、
相手国に致命傷を与えたりはしない」という防衛の方針がとられてきま
した。「日本は相手国に致命傷を与えたりする脅威ではありません」
「現にそんな兵器持ってないし」という態度をとることで、相手国に
「日本を攻撃する口実」を与えない、という防衛戦略です。この防衛
戦略を「専守防衛」といいます。
柳沢氏の上記発言にあるとおり、国土が狭く、資源もとれない、食糧
自給率も低すぎる日本は、戦争なんてあまりにも現実的ではありません。
「攻められたら手遅れ」なのですから、政治家は憲法9条にのっとり、
「全力で戦争を回避する」使命を全うして、戦争の芽を摘む外交をする
ことこそ大事なのではないでしょうか。