2017年9月9日土曜日

やや日めくり憲法99条 憲法を守らないといけないのは誰?


 みなさん、これまで憲法を日めくりでみてきましたが、振り返るといろいろな
人たちが登場しましたね。

 だいたい登場順にいうと、

 ① 天皇

 ② 私たち国民

 ③ 公務員

 ④ 弁護士

 ⑤ 国会議員

 ⑥ 総理大臣

 ⑦ 裁判官

 

 さて、この中で、憲法というルールを守らなければいけないのは、誰でしょう?

 

 これは憲法カフェ定番クイズのひとつ。
 答えは、この99条、憲法の実質最後の条文に書いてあります。



<日本国憲法 99条>
 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官
その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務
を負う。





 そうです、答えは①③⑤⑥⑦。
 つまり国家権力の側にいる人たち、②国民と④弁護士以外です。
 ちなみに憲法カフェでは④に引っかかる方がけっこういらっしゃいます。
 弁護士も権力を持っているように感じられるのでしょうか…でも弁護士は
ただの民間人、国民の一部ですね。



 これまで繰り返しお話ししてきたように、憲法とは、国民(市民)ひとり
ひとりがそれぞれ自分らしく自由に暮らし、幸せに生をまっとうすることが
できるようにするためにあるもの。
 そのために、国家権力に対して、国民の○○という自由を侵害してはいけない
だとか、国民のために○○というサービスをしなさいだとか、命じるものです。



 憲法をどうしても変えたい方々は、「今の憲法は自由や権利ばっかり
だからおかしい。自由には義務や責任が伴うはずだ。」としきりとおっ
しゃいますが、それこそが「おかしい」お話、なんですよね。
 もともと、憲法とは国民の自由や権利を、国家権力が踏みにじることの
ないように、その手枷足枷として存在するものなんですから。
 これが「立憲主義」ですね。

 そして、憲法に定められた国民の自由や権利は、もともと、「他の人の
自由や権利を害してはいけない」という意味において、義務や責任を伴う
ものでした。「ひとりひとり」がそれぞれ自由や権利を持っているのだか
ら、当然ですね。

 
 さて、私たちあすわかが一貫してその危険性を発信し続けている自民党
改憲草案ですが、この99条を、以下のように変えようというのです。



1 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。

2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する
 義務を負う。



 これはまさに立憲主義の否定、憲法を憲法でなくすものといっていいで
しょう。
 憲法は国民の自由を守るもの。私たち国民が、権力者に対して、憲法を
守れと命ずるものです。

 その憲法が、私たちの心の中にまで踏み込んで、憲法を「尊重」せよと
命ずるなんて、まさに「アベコベ」な話です。

 
他方で、本来憲法を守らなければならない権力側の方々(しかも天皇・
摂政が除かれてしまいました!)の義務からは、「尊重」が消え、単に
「擁護」義務だけになっています。彼らの義務を軽くしたい、薄めたい、
そんな意識が見えるようです。

 

 かつて、日本国憲法を「いじましい」とか「みっともない」などと
さんざんにこきおろした国会議員がいました。現在は総理大臣ですが、
いずれにしても彼は、憲法「尊重」擁護義務を負う立場にあるわけ
ですから、こうした発言は完全に憲法違反です。


 他方、国民は、いくらこの憲法を嫌おうがこきおろそうが、19条が
あるから完全に自由。でももしも、国民の憲法「尊重」義務が憲法に
定められてしまうと、これは憲法が許した19条の例外だと位置づけ
られてしまいます(ちなみに、自民党案には、「国旗」と「国歌」に
ついても、国民の「尊重」義務が明記されています)。

 国民の心の中にまでずかずかと立ち入って、自由を拘束しようという
自民党案。本当に怖い話です。

 私たちあすわかは、これからも、ひとりひとりの自由と幸せを守る日本
国憲法を大切に生かしていくために、不断の努力を続けます。


11条からはじまった「やや日めくり憲法」シリーズ、来月からは1条
に戻ります。お楽しみに!