2017年3月30日木曜日

やや日めくり憲法 40条(刑事補償)



今日は3月31日です。
4月1日の前日ということで、今日は憲法40条を取り上げます。
 まずは条文をチェックしましょう。


日本国憲法40条〔刑事補償〕
  何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受け
 たときは、法律の定めるところにより、国にその補償
 を求めることができる。


 正当な理由がなければ逮捕されたり、勾留されたりすることは
ないという権利は、憲法34条に定められていましたね。
これは逆に言えば、一定の正当な理由があれば、国は私たち市民を
逮捕することができる、ということでもあります。


 でも、「逮捕された=有罪」ではありません。
 逮捕された人は、裁判で無罪を主張することができます。
検察官は有罪を立証できない限り、無罪判決が言い渡されます。


 でも、無罪判決が出るまではとっても時間がかかります。
 ただでさえ、それまで逮捕・勾留されていた人は、いろいろな
自由を奪われています。
 自由に出歩くことができません。仕事をすることもできません、
捕まったままで働けなければ、職を失う可能性も低くありません、
家族や友人と自由に過ごすこともできません。
残念ながら日本はいまだに「逮捕されたんだから有罪なんだろう」
というイメージが根強く、「あの人、逮捕されたんだってー」という
噂が広まるだけで世間の信用も失ってしまいがちです。

なので、たとえ無罪判決を言い渡されたとしても、逮捕・勾留
されている間に失われた時間や生活は、もう戻ってきません。

  そこで、憲法40条は、逮捕・勾留されていた人が無罪判決を
受けた場合は、国に対して経済的な補償を求めることができること
を定めています。自由を奪われていた日数に応じて、1日あたり
一定のお金が支払われることになっています。


 この仕組みが憲法で定められていることは、とても重要です!
 
 もし、憲法で定められていなければ、法律でこの制度を廃止でき
ちゃいます。そんなことになったら大変です。
 時の政府が、政府にとって邪魔な人物を、裁判で無罪になるだろう
と思いながらも、とにかく逮捕して自由を奪う、なんていうことを
したとしても(ヒドイですね)、国はなんにも補償をしなくてよい
です、ということになりかねないからです。

  このような規定は世界的にも珍しく、他にはイタリアの憲法に
あるくらいです。さすが日本国憲法!

 政府の横暴を許さないための立憲主義に基づく規定ですから、不断
の努力で守らなければいけませんね。