7年8カ月の傷を抱えつつ
前向きにまた「不断の努力」ですね!あすわか声明
1 安倍首相の辞任
改憲への格別の執念を振りかざした安倍晋三氏が、7年8カ月居続けた
首相の座から退きました。このことは、憲法や民主主義のこれからにとって
はやっぱり小さなことではありません。
2 キリがないけれど7年8カ月を振り返ります
2013年、憲法改正ルール(96条)を緩いものに変えることに挫折
したと思ったら、国民の目と耳をふさぐも同然の特定秘密保護法を、反対
の声をねじ伏せるようにして成立させました。
2014年、閣議決定1つで永年の9条の解釈(知恵)の積み重ねを
ひっくり返すという禁じ手。
2015年、数万人が国会を取り囲む中、またもや「数の暴力」で強硬に
成立させた安保法制。
2017年には、国民の心を容赦なく侵す共謀罪(テロ等準備罪)までも
作ってのけました。
そして今、2015年と2017年に引き続き今年も、憲法53条に反し
て臨時国会を開きません。
次から次に自民党が出す改憲の案は、その場の思いつきのようなものばかり
で、むしろ「なんでもいいからどこか変えたい」という執念ばかりが際立って
いたように思います。
そんな乱暴なやり方でリードされても、国民の関心がついていくわけがあり
ません。安倍氏は辞任を表明した際、憲法改正について「残念ながらまだ国民
的な世論が十分に盛り上がらなかったのは事実であり、それなしには進める
ことができないのだろうということを改めて痛感をしている」と述べました。
安倍氏や政権への不信感の高まりも相まって、国民が憲法改正に情緒的に
流されることはありませんでした。
3 この国の民主主義は守られたのか
それじゃあこの国の民主主義は守られたのでしょうか?一文字も変えられ
ていない憲法は、今でもしっかり権力を縛ったままといえるでしょうか?
残念ですが、そうではない。憲法は一文字も変わってはいませんが、憲法
と真っ向から矛盾する安保法制はじめ数々の法律が作られ、安倍政権は憲法
の規定を堂々と無視しました。憲法の規定よりも権力のやりたいことが優先
する、という既成事実が作られてしまった。政治が憲法を蹴破る瞬間に、
国民は立ち会ってしまった。
性差別に“寛容”で「伝統的家族観」に固執する姿勢は国際的に見ても異質
です。「ジェンダーギャップ指数」では、日本は2012年の101位から、
今年は121位まで落ちました。
政権によるメディアへの圧力、情報隠しや情報改ざんなども繰り返されま
政権によるメディアへの圧力、情報隠しや情報改ざんなども繰り返されま
した。行政の説明責任が果たされ、国民の知る権利が果たされる光景を、
久しく目にしていません。
沖縄・辺野古の新基地建設を見れば、政権がいかに「そこに生きる人」の
沖縄・辺野古の新基地建設を見れば、政権がいかに「そこに生きる人」の
声を聴こうとしないか、明瞭です。
それにもかかわらず、安倍政権は“盤石”でした。
それにもかかわらず、安倍政権は“盤石”でした。
4 菅・新首相へ
菅義偉首相は、官僚を恫喝して「異論を許さない」政治をさらに強める
ことをすでに宣言しています。ささやかれている「敵基地攻撃能力」の
保有や、緊急事態条項の創設は、どちらも実質的には憲法をスクラップ
にするようなありえない案です。
あまつさえ、「自助・共助・公助」(!)という政治理念で、より
一層の福祉の切り捨てが予告されています。これ以上、この社会が憲法
から離れていかないように、厳しく見ていく必要があります。
5 「めんどくさいやつ」であり続けます
私たち「あすわか」は、自民党の改憲草案の怖さを伝えたくて作られた
法律家団体です。その怖さ・ヤバさを分かってもらうために、おのずと
憲法や民主主義の基本知識を知って、感じてもらうことが活動の軸足に
なりました。
「個人の尊重」「不断の努力」といった憲法の基本理念が、多くの人を
励まし、無数の「微力」をアシストしてきたことは間違いありません。
憲法にエンパワメントされた人が、人間として、親として、あるいは主権
者として街頭やSNSや国会前で声をあげ、多くの人の心を揺さぶって
きた光景を思うと、私たちは法律家だからこそできること、すべきことの
重さを自覚せずにはいられません。
自由、平等、民主主義、立憲主義…憲法に書いてあるとおりの社会への
途は、まだまだ続きます。
あすわか670名は、法律家として、主権者として、まだまだ、「権力
にとってめんどくさいやつ」であり続けます。
2020年9月16日
明日の自由を守る若手弁護士の会
共同代表 神保 大地
〃 黒澤 いつき