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2017年8月1日火曜日
改憲の先取り!? 親族の「扶養義務」強化の流れに注意(>_<)!
生活保護を受けている人(Aさん)がいて、その人の親族がいる時。
そして、その親族がAさんを扶養できる可能性がある場合があります。
生活保護受給の際、地方自治体はその親族にどう対応しているのか、
厚生労働省が実態調査を始めるそうです。
● 生活保護の「扶養義務」を調査へ(朝日)
http://www.asahi.com/articles/ASK7M7391K7MUBQU01W.html
扶養する経済力があるのに不適切に扶養義務を逃れている場合の対応
について、改善させる狙い、なんだそうです。
「親族による扶養が受けられない」という事情は、生活保護利用の前提条件
ではありません。
でも現実の生活保護実務では、自治体の窓口がまるで「親族による扶養」が
前提かのような説明をしたりして生活保護を利用したい人を追い返すケースが
頻発していて、結果、追い返された人が餓死するなど痛ましい事件が起きたり
しました。
今回の厚労省の調査は、確実に、親族への「扶養義務」を強く負わせる政策の
足がかりとなります。
家族なんだから、助けるのが当たり前でしょう?
家族の輪を大事にするのは当然でしょう?
そういう発想が根底に流れているように感じます。
しかし、世の中そんなに絵に描いたような美しい家族ばかりでしょうか?
家族だからといって以心伝心で愛し合って信じ合えているとは限りません。
そりが合わず何年も音信不通の兄弟姉妹、嫁に陰湿ないじめを続ける
舅・姑、いわゆる“毒親”に縛られる子ども、妻に物理的・精神的な暴力を
振るい続ける夫…
ひとことで「家族なんだから助け合おうね」とまとめられても困る事情は、
たくさんあります。距離を置いた方が円満でいられる家族、縁を切ることで
平穏を取り戻した家族、それぞれの家族の数だけ、「幸せの形」があります。
残念ながら、「扶養義務の強化」という政策は、この、それぞれの家族が
編み出した「幸せの形」を壊します。
親族なんだから扶養しようと思わないの?
今、財産いくらあるの?
ちょっとは余裕あるんじゃないの?
一人くらい面倒見られるんじゃないの?
親族が困窮しているときに、自分たちの幸せだけ考えてていいの?
…こういう、「まことに美しい正論めいた批判」で親族が追い詰められる
社会になると、どうなるでしょう?
あまりつきあいのない親族に突然財産の調査が入ったり「扶養」を求められ
れば、多かれ少なかれ親族間に亀裂が走ります。
亀裂が入るだけならまだしも、経済的負担がかかって結局全員が経済的に
“沈没”しかねません。
暴力や精神的支配から逃げるために縁を切っているような事情があれば、
心身の安全すら危うくなります。
そして、こういう制度が現実になれば、「親族に迷惑をかけたくない」という
思いから、そもそも生活保護の利用を自粛する流れになりかねません。
強い扶養義務という制度が、困窮する人に、「親族に迷惑をかけることに
なるぞ」という圧力をかけて、窓口に行かせない、という構図ができあがって
しまうのではないでしょうか。
日本国憲法25条は、国民に生存権を保障しています。
困窮して「人間らしく」生きられない状況に陥れば、国家は当然にその人に
「人間らしい」生活を保障する義務がある。これは決してワガママなどではなく、
人権です。
その生存権がきちんと実現できなくなるような制度は、憲法に抵触します。
そして、もう一つ見過ごせないのが、この「扶養義務の強化」という流れが、
日本国憲法24条を変えようという発想と、とても似ているところです。
それぞれの家族の幸せの形があり、家族のメンバー全員が尊厳ある存在
である。個人の尊厳と両性の本質的平等が、家庭の中でも守られなければ
ならないことを定めたのが24条。
その24条を、ちゃぶ台をひっくり返すように変えようとしているのが、自民
党や、その背後にいる日本会議です。
個人の尊厳よりも「家族」という秩序が大事。「自分らしさ」などどうでもよく、
家族という共同体の維持がなによりも優先される。自民党の改憲草案の
24条は、そういう「家制度」によく似た世界観に彩られています。
親族なんだから扶養しろ、と迫る政策は、まさに改憲草案24条と同じ発想
ですね。
改憲草案の先取りといっても過言ではない、厚労省の調査です。