広島原爆の日に発信された信濃毎日新聞の社説をご紹介します。
岸田首相は、表面上「核兵器のない世界」を目指すと繰り返しながら、
廃絶に向けた具体的な行動を取ろうとはせず、むしろ米国の「核の傘」
による拡大抑止の強化を図る姿勢を鮮明にしていることを批判しています。
● 〈社説〉広島原爆の日 抑止への依存 廃絶に逆行 (信濃毎日)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024080600174
<一部引用>
発効から3年を経た核兵器禁止条約にも背を向けたままだ。
再び使われないための唯一の方法は完全な廃絶だと明記する条約は、
広島、長崎の被爆者たちの長年にわたる訴えの具現化である。
しかし、政府は締約国会議にオブザーバーとして加わることさえ
拒んできた。岸田首相は「現実的な取り組み」として、核拡散防止条約
(NPT)の下での核軍縮を重視するものの、既にNPT体制の限界は
あらわだ。
条約の履行状況を協議する再検討会議は、2015年に続いて22年も
最終文書を採択できずに決裂した。保有各国が核軍縮の義務を果たさない
ばかりか、ロシア、中国、米国が互いに核戦力の増強や近代化を図り、
二国間の交渉すら成り立たない状況にある。
NPT体制が瓦解(がかい)の瀬戸際にあることを見据え、核廃絶に
確かな道筋を付けるためにどうするか。核禁止条約は、NPTを否定する
のではなく補完する条約である。保有国やその傘の下にある国が、NPT
を弱体化させるとして背を向けることに道理はない。
被爆国としての責務に向き合うなら、日本が禁止条約に加わるのは当然だ。
次回の締約国会議は来年3月にある。少なくともオブザーバーとして参加
することをあらためて政府に求める。
<引用終わり>